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異常検知とは?概要と業界別の実例、その実現方法をご紹介

近年、機械学習を用いた異常検知システムの開発がさかんになってきています。 日本の製造業は、従来より世界的に見てもとりわけ優秀ですが、現在は少子高齢化による後継者不足などの課題に直面しているのが現状です。 このような国家の危機的状況ともいえる大きな課題を解消するために、機械学習による異常検知システムが脚光を浴びています。 異常とは、通常と異なる振る舞いをすることで、日常生活においても、安定していた株価が急変したり、動きを保っていた機械が急におかしな動きをしだしたり、アカウントごとの投稿が一定量だったSNSの投稿量が激増した(炎上)など、「いつもと違う」ことに気が付く急激な変化は、私たちの身の回りでもよく起こっています。 今回の記事では、製造業や金融業などで活用されている、機械学習における異常検知の手法やアルゴリズムなどをご紹介します。機械学習を用いた異常検知による自動化を検討している方は、ぜひご活用ください。

  • 目次

    異常検知とは?
    異常検知実例6選
    異常検知を導入するメリット
    異常検知の種類・方法
    AI異常検知を行う際のポイント
    統計知識・プログラミング不要でAI異常検知モデルの構築

  • 異常検知とは?

    異常検知とは「蓄積された大多数のデータ(ビッグデータ)群と比べて、挙動が異なるデータを検出するための技術」です。

    機械学習による異常検知では、「簡単な異常の検知」から、人が認識するのは不可能な微細な変化や機器が故障する前兆といった「難しい異常の検知」まで、さまざまな異常検知が可能です。活用される分野として、次の章でご紹介する、クレジットカードの不正使用検知、予測も含めたシステムの故障検知、人間や動物などの異常行動検知などがあります。

    異常検知の手法には、大きく分けて「統計モデルに基づいた手法」と「データ間の距離に基づいた手法」があります。また、異常検知手法を活用する際には、どんな統計モデルによって仮定を行うのか、またはデータ間の距離における定義の仕方がいくつか存在するため、それぞれどの条件を使った異常検知手法なのかを意識して使用する必要があります。

  • 異常検知実例6選

    異常検知の技術は、現在さまざまな業務や生活の場面で活用されています。
    次に、異常検知の手法がどのように活用されているかについて例を交えながら紹介していきます。

    1.不正アクセスの検知
    異常検知の技術は、インターネット上における不正アクセスの検知にも利用されています。
    システムに異常な通信が起きた際に検知を行い、管理者にアラートを通知し不正アクセスの侵入を防ぐ方法です。

    2.IT業界で活用される「スパム検知」
    異常検知技術は、IT業界においてネットワークの侵入のみではなく、スパムメール検知にも活用されています。
    IT企業では、セキュリティは自社の信用に関わる大変重要な課題です。
    機械学習やAI技術を駆使し、組織内に蓄積されているメールやチャット上のメッセージからセキュリティリスクの傾向をリアルタイムで分析することで、情報漏洩などの重大なセキュリティインシデントを未然に防ぐことができます。

    3.カードの不正利用の検知
    異常検知の技術は、クレジットカードの不正使用検知の場面でも利用されています。
    例えば、あるクレジットカードの場合、AIを用いて24時間365日カードをモニタリングしています。もしこれらの異常検知技術をもってしても、不正利用が発生した際には、会員保障制度に基づいて紛失・盗難の届け出日の60日前から損害補償を行うサービスを取り入れています。

    4.異常動作の検知
    近年、人々のセキュリティ意識が高まっており、市中の至る所に監視カメラが設置されているのを見かけるようになりました。
    実際、これらすべての監視カメラの映像に対して人が監視する行為は現実的ではありません。
    そこで、監視カメラの異常動作を判別する際に、異常検知技術が活用されています。

    5.不良品の検知
    異常検知技術は、不良品を検品する際の業務にも応用されています。
    主な実用例として、ある大手電機メーカーが画像データを用いた検品作業の効率化などを実現するために、ディープラーニング技術を搭載したソフトウェア製品を開発し、不良品の検品作業に活用されています。

    6.医療業界での活用
    医療の現場において、異常検知技術はAIを組み合わせた画像診断に用いられています。
    医療機関が過去に蓄積した膨大なカルテの情報やCT画像のデータをAIが学習することにより、画像に現れた兆候や病変部位を異常として検知できるようになります。
    これにより、従来画像専門の技師が行っていた診断が自動化でき、医療における運用コストの効率化や画像の読み取り精度の向上が期待されています。

  • 異常検知を導入するメリット

    異常検知技術を導入することにより、利用者には以下のようなメリットがあります。以下のようなものがあります。

    1.事故や問題の防止
    2.工数の削減
    3.ヒューマンエラーの予防

    では具体的に見ていきましょう。

    1.事故や問題発生の防止
    AIによる異常検知技術を用いると、機械の異常動作も検知することが可能です。
    あらかじめ予測のためにデータを用いてを学習させておけば、事前に異常を検知することができるため、事故や問題発生を未然に防ぐことができ、システムなどの安全性向上につながります。

    2. 検査などの工数の削減
    AIによる異常検知システムを導入することにより、従来人の手によって行われていた検査工数が削減可能です。検査の精度やスピードが上がるだけではなく、人手が大幅に削減できるため、人件費などの人的コストや工数の削減が見込めます。

    3.ヒューマンエラーの予防
    検査員によるチェックは、人の手によるものなので、欠陥品を間違えて合格品としてしまうなど、ミスが起きてしまうことは避けられません。
    AIによる異常検知技術は、多くのデータから正確な分析・分類を実施するのが得意としているため、結果的にヒューマンエラーの予防も促進されます。

  • 異常検知の種類・方法

    1の統計モデルに基づく場合は、どのような統計モデルを仮定するかが重要です。また、2のデータ間の距離に基づく場合は、距離をどのように定義するのかによってさまざまな異常検知手法が提案されています。
    ここでは統計モデルに基づく手法として「ホテリング理論」を、データ間の距離に基づく手法のうち、「k近傍法」と「LOF法」を紹介します。

    ホテリング理論
    統計モデルに基づく異常検知技術で最もよく利用されているものとしてホテリング理論を紹介します。

    異常検知の例として、まず一番簡単な変数が1つの場合を見てみましょう。

    ある集団の身長データのヒストグラムがあったとき、1つのデータを除いて140cm~200cmの間にデータが分布しており、いわゆる釣鐘型の正規分布の形をしていたとします。
    この例ではおそらく誰が見ても60cm付近にある1点は異常値と判定できますが、もし仮に110cm付近にデータがあった場合これは異常値と言いきれるでしょうか。
    このように、人の主観に左右されない異常データを検知するための客観的な評価基準が必要です。
    ホテリング理論は、統計的モデルを用いて客観的に評価できるようにしたものです。

    ホテリング理論ではデータの分布として正規分布を仮定します。
    正規分布の母平均をμ、母標準偏差をσとすると、計測データxは、以下の確率密度分布に従って現れると考えます。

    ホテリング理論を用いる際、定義した異常度はデータ数nが十分に大きい時、「自由度1のカイ二乗分布に従う」ということが数学的に証明されています。

    これによって分析者の主観によらずに、「異常度a(x’)が10以上をとる確率は0.16%しかないので、偶然に基づく正常なデータとは考えにくく、このデータは異常値に違いない」と客観的な主張が可能となります。

    ホテリング理論の問題点
    ホテリング理論は、異常値を検出する際の最も基礎的な方法として知られていますが、以下のような問題点もあります。

    1.データが単純な正規分布から発生していると仮定しているため、データの分布が、正規分布から著しく外れている場合、また分布が複数の山を持つ場合などは異常値を正しく判断できなくなることがあります。

    2.正規分布のパラメータはあらかじめ決められ、変化しない値であるとしているために、分布のパラメータが時間とともに変化するような時系列データには適用することができないことがあります。

    ホテリング理論はこれらのような問題点は持ってはいるものの、半導体などの工場において管理された条件下では、長い利用実績があるという特徴もあります。

    k近傍法
    k近傍法は、教師あり学習と呼ばれるカテゴリの一種であり、事前に正解としてラベリングしてあるデータセットの用意が必要となります。

    ホテリング理論では、データが正規分布となっていると仮定しているため、正常なデータが多数のクラスターで構成されている場合には、うまく異常値を検知することができません。

    そこで、確率分布を明確には仮定せず、データ各点から最も近いデータへの距離をそれぞれ計算することで、異常値を検知する手法(最近傍法)がよく利用されます。異常値の点だけ突出して各クラスターからの距離が大きくなっている場合、最近傍法を用いることで、あるデータからほかのデータの最も近くにあるデータ(最近傍点)までの距離がある閾値を越えた場合に、その点を異常値であると判定します。
    この際、閾値は分析者があらかじめ何らかの方法で、決める必要があります。

    最近傍法では最も近い点までの距離を用いて異常値を判別しますが、最も近い点の代わりに、2番目に近い点、さらに3番目に近い点までの距離を用いることも可能です。
    これらをまとめてk近傍法と呼んでいます。

    LOF(Local Outlier Factor)法〔局所外れ値因子法〕
    LOF法とは、データの集まりの中から外れ値を見つけ出す局所外れ値因子法とも言われ、外れ値を検知するアルゴリズムのひとつです。
    k近傍法では、あらかじめ閾値を決めておく必要がありますが、どのような値を選ぶかはデータの特性に強く依存しており、特に多次元の場合などには作業が複雑になります。
    また、各クラスターでクラスター内におけるデータ密度が全く異なる場合には最近傍法は利用不可となる可能性があります

    これらの問題点を解決するためによく利用される手法を局所外れ値因子(LOF: Local Outlier Factor)法といいます。
    異常値をp、またpに最も近い点をp’とすると、p’から見た最近傍点はpではなく、あるクラスターのなかのどれかとなります。
    点pの最近傍点までの距離r(p)は点p’の最近傍点までの距離r(p’)よりも非常に大きくなると考えられます。
    このとき、任意の点pにおける異常度a(p)を以下のように定義します。

    異常度a(p)が1より大きな閾値を超えた際に、そのデータを異常値とみなすこととします。この手法もk>1の場合に拡張できます。
    LOF法はk近傍法が利用できないような問題でも、比較的もっともらしい結果となることが経験的に知られています。

    k近傍法、LOF法では閾値をどのように定めるかということについて、統計モデルを用いた方法ほどには明確に定められていませんが、距離に基づく異常検知技術も実社会では広く使われています。

  • 統計知識・プログラミング不要でAI異常検知モデルの構築

    AIを活用することで、異常検知が可能であり、実際に利用されている場面をご紹介しました。
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    この開発スキームは、業種・業界によらないものである上、開発を続けることで開発ノウハウがブロックで構成されたテンプレートとしてプラットフォーム上に順次蓄積されていくため、今後のAI開発においてはさらなる開発の早期化、開発費用の低減が期待されます。

    MatrixFlowは精度の高い異常検知AIの作成だけではなく、需要予測、在庫最適化、生産計画立案、人員配置など、製造業でのさまざまな課題も解決することができます。

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    「製造業でのAIによる異常検知と原因の特定」

    製造業において、日々稼働している生産ラインの中には、製品を作るためのさまざまな機器があります。これらの機器が突然、なんの前触れもなく故障し、停止してしまうと、生産ライン全体の停止、修理にかかる費用、新しい機器のリース代など、さまざまなコストがかかり、製造する上でのデメリットとなります。
    上記から、異常検知は製造業においてクリティカルな問題です。また、異常検知の実施にあたっては現場の長い経験や、高度な技術も求められるため、工場や生産管理の現場担当者から見ると、異常検知は頭を悩ませる課題のひとつとなります。
    今回は、そのような異常検知について、その概要、方法、さらには最新のAI・機械学習を活用した異常検知の方法についてもご紹介します。

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