建設・土木・ゼネコンにおけるAI技術:AI活用領域と、事例6選をご紹介
機械学習やディープラーニングの技術進化で、AIの活用・導入が一般的になりつつあるなか、AIとの親和性から、高いレベルで導入が進んでいる業種と、そうでない業種もあります。建設業界ではゼネコンをはじめ、さかんにAI投資が進められており、AIによる業務改善や品質向上など、建設現場へのプラスの効果が期待されています。 今回は、建設業界ならではの課題や今後の動向、実際の活用事例についてご紹介していきます。
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建設業界における、AIの活用領域
●維持管理でのAI活用
建設業界において、とくに維持管理の分野では点検現場でのひび割れの画像認識や、打音・漏水音の音認識などにAIが活用されています。この分野では、SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)の研究開発と、社会実験が進んでいます。SIPは、内閣府総合科学技術・イノベーション会議が府省の枠や旧来の分野を超えたマネジメントを行って、科学技術イノベーション実現のために創設した国家プロジェクト。SIP課題のうち「インフラ維持管理・更新・マネジメント技術」では、10件以上のAI 関連技術を用いた産学連携のプロジェクトが進行中です。
●舗装路面の異状検出システム
交通事故等の危険を回避するため、道路管理者は利用者の安全・安心を確保する必要があります。そこで、路面計測を行って異状箇所から補修すべき箇所を判断し、早期に補修することが重要です。この作業にあたっては広く細かくデータを収集する必要があることから、実施範囲、頻度ともに十分行われていないのが実状といえます。また、維持管理費用がかさむことも問題となっています。
建設企業A社は、AIを用いて舗装路面の異状検出を行うシステムの研究開発に取り組んでいます。これは、SIPの課題として大学と共同で研究を行っているもの。開発中のシステムでは、深層学習(ディープ・ラーニング)を活用。車両から撮影した路面の動画像を分析して、ひび割れなどの損傷、パッチング、ジョイント、マンホールなどの平たん性を損ねる状態(異状)などを識別します。これによって、道路上の位置を認識することが可能です。
ここから得られた結果に、同じく車両に搭載したスマートフォンを用いた道路性状簡易評価システムで収集したIRI(国際ラフネス指数)の推定結果を組み合わせて劣化診断を行います。
この診断を行うことで、
・道路管理者の点検を省力化・
・補修に係る意思決定の高度な支援
が可能になります。●施工でのAI活用
施工の分野では、建機や人の稼働データによる作業認識、施工現場の画像認識などにAIが活用されています。ある程度の学習データを集めることのできるゼネコンや、建設機械メーカーなどがこの取り組みに熱心です。スーパーゼネコンのB社では、社内だけでも、30を超えるAI関連技術の研究開発が進行中だといいます。また、建設機械メーカーのC社では、研究開発費のうち15〜20%がAIを含めた次世代技術の開発に充てられており、国内外の大学などと共同で研究を行っているそうです。●山岳トンネルの切羽評価システム
日本の山岳トンネル工事では、NATM(New Austrian Tunneling Method、新オーストリアトンネル工法)が標準工法として採用されています。NATMは、支保工の規模を事前の地質調査に基づいて計画するもの。計画地点における次の7項目を、現場技術者が評価、結果によって計画を逐次見直しています。
1. 切羽(掘削面)の強度
2. 風化変質
3. 割目間隔
4. 割目状態
5. 走向傾斜
6. 湧水量
7. 劣化度合スーパーゼネコンD社では、数値解析を専門とする企業の力を借りつつ、AIが地質学の専門家と同等の評価ができる切羽評価システムの開発を進行中です。
このシステムでは深層学習を活用し、AIに切羽の画像と専門家の評価結果の両方を学習させます。こうすることで、地質状況を早く、高精度に評価することが可能になるのです。従来は切羽の画像を上方、左右の3領域に分割して平均的な評価をしていましたたが、このシステムでは、画像の領域をこれまで以上に細分化したものが深層学習で即座に評価されるため、切羽の変状や崩落に対応、局所的な手当てができるようになります。工事の安全性、経済性をが向上させるシステムです。
●その他のAI活用
建設業におけるその他のAI活用状況に、施設運用があります。たとえばAIを活用したスマートエネルギーシステムの導入です。施設の運用に関わるAI導入には、建設を担当するゼネコン、エネルギーを供給する電力・ガス会社、機器を導入する電機メーカーなど多くの企業が取り組んでいます。●スマートエネルギーシステム(AHSES)
猛暑で電力ひっ迫が問題となる現在の日本において、省エネルギーの推進は喫緊の課題です。そのため、高度な省エネルギー性能を有する建築物であるZEB(Net Zero Energy Building)の実現・普及が求められています。
ZEBの実現に不可欠なのがEMS(Energy Management System)の構築です。EMSは建築物・設備の大幅な省エネ化と再生可能エネルギーの導入のほか、天候に左右される太陽光発電や容量に限りがある蓄電池の電力などを、需要に応じて効率的・効果的に供給することを可能にします。
そんな中、ゼネコンE社が、AIを活用した新たなEMSを含むスマートエネルギーシステムAHSES(Adjusting to HumanSmart Energy System)を開発しました。
E社のシステムは、次の5つで構成されています。
1. 電力需要を予測し最適な運転計画を作るプログラム
2. 創エネ設備
3. 蓄エネ設備
4. 電力変換装置
エネルギーの運用状況を確認する「見える化」画面
このうち、プログラムにおいては、建物の利用や気象の情報をもとに、機械学習と数理手法により電力需要予測および最適運転計画を行います。これは創エネ設備と蓄エネ設備から最適なタイミングで電力をアシストするもので、電力負荷のピークカット効果が期待されています。 -
建設業界でのAI活用事例
●建設業界でのAI活用事例1
スーパーゼネコンF社は建設機械の自律走行をサポートする制御システムの開発を行っています。ほかにも、作業員との接触を防止するための検知システムも導入することで、より安全性を高めることに成功。建設機械にセンサーを設置してベテラン作業員の作業情報を収集し、AIを活用した画像データから人や障害物の検知を行うシステムです。●建設業界でのAI活用事例2
スーパーゼネコンG社では、ロボットを活用し、単純な繰り返し作業や負担の大きい作業などを自動化しました。ロボットの導入で、人間には不可能だった下方からの上向溶接ができるようになると同時に、溶接の品質と性能が大幅に向上。ロボットの活用は、工程の短縮の実現や、従業員の負担軽減と業務効率化にも役立ちます。また、建設工事の危険予知活動にAIを導入。AIによる独自のシステムが厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」に掲載された約6万4,000件の災害事例を解析、類似している作業の災害事例を見える化します。現場の安全担当者に「各種作業の災害事例」を提示でき、危険予知に貢献するもので、今後一層期待されるシステムです。
・建設業界でのAI活用事例3
スーパーゼネコンH社は、高層建物等の外壁調査システムを開発しました。これはドローンで撮影した赤外線画像から、AIが建物の外壁タイルの浮きを自動判定するもので、すでに実用化されています。建築基準法第12条により、竣工から 10 年以上経つ建築物は全面打診等による外壁調査が必要です。打診等人の手による外壁調査をドローンが行い、外壁タイルの赤外線撮影するので、仮設足場の設置などのコスト削減ができ、人が高所で作業をするという危険がなくなり安全です。
さらに、ドローンで取得した赤外線画像をAIが解析。タイルの浮きを一枚ごとに自動判定し熱分布データとして抽出します。どこのタイルに浮きが発生しているかが一目でわかるため、高精度・高品質な調査、省人化、さらに調査期間の短縮も実現できます。
・建設業界でのAI活用事例4
スーパーゼネコンI社では、ガス圧接継手の施工現場で画像認識AIをトライアル導入して、認識率や使い勝手を検証しました。同社が手がけるビルの建設現場において、スマートフォンを利用して鉄筋継手の画像を撮影、画像認識AIによって外観検査を行いました。これまでの目視で1カ所あたり5分程度を要していた検査とくらべて、画像認識AIを活用すれば、1カ所あたり20秒から30秒程度と格段に速くなりました。スマートフォンのアプリを立ち上げ、鉄筋のサイズ(径)を指定、撮影ガイドにならって撮影するだけという手軽さも魅力的です。
・建設業界でのAI活用事例5
スーパーゼネコンJ社は、IoTやAIの活用によって働く人の快適性、健康、利便性、安全性を向上しつつ、最適な建物管理を実現する「スマートビルマネジメントシステムを開発・提供。ビル内にAI搭載のカメラを設置することによって不審な動きをする人物を自動検知したり、過去のエレベーターの利用状況を分析してエレベーターの待ち時間短縮につなげたり、室内の利用状況を把握して快適な室内温度をキープしたりを可能にするものです。AIがビルマネジメントを行うことで、働き方改革の促進が期待されます。・建設業界でのAI活用事例6
建設機械メーカーのK社では、労働力の不足に対応するため、AIの活用による建設現場の生産性向上に取り組んでいます。その取り組みの一環がスマートコンストラクションです。これは、コマツの建機が関わっている施工だけでなく、ダンプトラックの土の運搬や測量といったすべてのプロセスを見える化した上で、最適化を図っていくというもの。現場に置いておくタイプのデバイスなので、コンピュータ処理もリアルタイムに実行可能です。1日の作業が終わったあとに事務所に戻れば、すでに処理が終わっているという状況を作り出すことができます。現場監督やオペレーターが過去の経験や勘で行ってきた作業をAIに任せることから、新しい価値の創造が期待されています。 -
プログラミング不要でAIが構築できる「MatrixFlow」
MatrixFlowはプログラミング不要のAI構築プラットフォームです。
アルゴリズムの開発は、処理単位のブロックをドラッグ&ドロップし、繋ぐことで実現します。
またデータの管理や作成したアルゴリズムの管理など、AI構築に関わるすべての工程を一元的に管理することができます。MatrixFlowは株式会社竹中工務店の「ソーシャルヒートマップ®︎」の一部にも採用されています。その場所を訪れた人が思ったこと・感じたことといった質的な評価を可視化するツールで、位置情報とまちに関する質的な評価をリンクさせたデータを提供、テナント誘致、まちの活性化施策、社会課題解決に対して役立つと考えられています。
<解析スキーム>
①位置情報付きのSNS投稿内容から、まちに関するSNS投稿内容のみを抽出
②投稿内容から投稿者の属性(性別や年代などを推定)、カテゴリ(食事、イベントなど何についての投稿かを10個に分類)、印象(ポジティブ/ネガティブ)を分類し、その場所の質的評価として蓄積
③蓄積されたデータを「マッピング」、「グラフ化」、「キーワード表示」で分かりやすくその場で可視化
参照:https://www.takenaka.co.jp/solution/future/social/この開発スキームは、業種・業界によらないものである上、開発を続けることで開発ノウハウがブロック、およびその組み合わせのテンプレートとしてプラットフォーム上に蓄積されていくため、今後のAI開発においてはさらなる開発の早期化、開発費用の低減が期待されます。
プログラミング不要のAI構築プラットフォーム「MatrixFlow」を用いることで、開発の早期化、開発費用の低減が実現できます。MatrixFlowはプログラミング不要のAI構築プラットフォーム。アルゴリズムの開発は、処理単位のブロックをドラッグ&ドロップしてつなぐことで実現します。データの管理や作成したアルゴリズムの管理など、AI構築に関わるすべての工程を一元的に管理することも可能です。
業種・業界によらないものである開発スキームを持ち、開発ノウハウがテンプレートとしてプラットフォーム上に蓄積されていくため、今後のAI開発においてはさらなる開発の早期化、開発費用の低減が大いに期待されるツールです。
AI導入にお悩みの建設業界のご担当者様は、AI導入をこれまでにないほど手軽にする、プログラミング不要のクラウド型AI構築プラットフォーム「MatrixFlow」をぜひご検討ください。
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