原材料の配合や工程にAIを適用した最適化事例
製造業の材料配合・工程条件の予測の分野についてもAIの活用が進んでいます。製鉄、素材、製薬などの業界において、成分の配分量や工程条件を精度高く予測することは困難です。その解決方法のひとつとして、近年AIに注目が集まっています。 製造業が重視しているのは、良い品質の材質・モノを生成するのに必要な条件を効率よく算出することです。 「どんな材料を、どんな割合で混ぜて生成するのか」など、今までは熟練した職人の経験・勘などによってしかわからなかった製法が、AIの活用によって効率よく考案できるようになります。 この記事では、材料の配合の最適化についてAIの活用事例を紹介します。

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数十年以上から数十秒に!半導体材料を最適化する配合について、AIを活用した大幅な高速化が可能に
ある化学工業会社では、量子コンピューティング技術を活用したAI導入によって、半導体材料の配合にかかる時間を、以前の数十年以上から数十秒にまで短縮できるといいます。
半導体材料の配合には、樹脂、フィラー、添加剤などの材料を使用します。それらをさまざまな比率で配合することになりますが、その最適な配合を調べるには、先に述べたように従来のAIモデルでは数十年以上かかる計算になっていました。
ブレイクスルーの契機となったのは、日本を代表する総合エレクトロニクスメーカーが考案した量子技術に着想を得た高速化技術でした。
半導体材料の配合に、この高速化技術を活用するには、統計力学の解析手法である「イジングモデル」の入力が必要です。
そこで、某化学工業会社では、半導体材料の特性を配合条件から予測できる「イジングモデル」を反映したAIモデルを独自に開発しました。
高速化技術と連携することで、以前のAIモデルと比較し、探索にかける時間を数十年以上から、たったの数十秒に短縮できるといいます。
また「速さ」だけでなく、性能の高さも特長です。
半導体材料として約3割程度、高い性能を得ることが可能だといいます。 -
飲料の新商品開発にAIを活用!材料配合の最適化で業務を効率化できる
次に、飲料の新商品開発におけるAI活用事例を紹介します。
従来は、技術者が自らの経験をもとに、原材料の配合・工程条件を調整しながら新商品の試作を繰り返していました。
国内の大手飲料事業会社では、その施策のレシピや技術者の知見をデータベース化するなどして、工夫をしていました。
しかし、その活用については技術者によってバラつきがあったのが事実です。その改善のため、レシピ開発のためのAIを開発しました。
試作結果の予測機能を得るためのAIモデルです。
過去の試験データを学習させたAIモデルに、技術者の知見をプラスすることで、「原材料の配合はどのようにしたらいいか」「どのような工程条件を設定することで、どんな試作ができるのか」などをAIが予測できるようになります。
この機能によって、手を動かさなくても、精度の高い試作結果を事前に得ることができるようになりました。
新商品開発にかける時間について、飛躍的な効率化ができたといいます。しかし、目指す「味」の実現には、技術者の発想力や経験が必要です。
そこで、今度は目標とする「味」から、工程・原材料を逆引きできる「レシピの探索機能」を開発し、AIモデルに追加しました。目標とする「味」の具体的な数値を設定することで、文字通りAIがレシピを探索します。
そうすることで、例え経験の浅い技術者であっても、熟練した技術者と同じように、レシピ候補を抜け漏れなく検討できるようになります。
また、新しいレシピについても、AIの活用によって発見が見込めるといいます。大手飲料事業会社の中には、飲料における豊富なレシピ開発の実績があります。
長年のものづくりで得た技術者の知見を引き出すAIの機能によって、開発力のベースの底上げが可能となります。
しかし、「味」の値だけでは表現できない全体のまとまり、風味などのバランスの調整には技術者の存在が欠かせません。
AIと人が相互に補い合うことで、これまでにない魅力的な飲料を効率的に開発することができるようになりました。AIには「レシピの結果が予測できる機能」に加え、味の数値から「レシピの逆引きができる機能」が搭載されました。
その機能の完成によって、技術者の業務は飛躍的に効率化されたといいます。
業務が軽減されたことで、技術者はAIにはできない、人にしかできない業務に集中することできます。
今後、少子高齢化によって人材が不足する中、働き方の改革という面においても、AIの活用は期待されています。
また、熟練の技術者の知見を学習したAIを活用することで、技術の継承も見込まれています。 -
材料の配合最適化におけるAIの課題とは
材料の最適な配合を探ることは、企業の利益に直結します。
鉄鋼業界を例にとって説明します。
鉄鋼業界では、スチールなどの金属の疲労強度を上げるために企業努力が続けられてきました。
なぜなら、金属の強度が不足したケースでは、人命にかかわる大きな事故に繋がる可能性があるからです。
被害は、人命を脅かす事故だけにとどまりません。
強度などに問題があった製品ロットの回収など、その不良は企業の経済的損失、信用問題にも繋がります。
近年では、材料の配合の最適化について、製造業でもAIの活用が進んでいます。以前は、AIの活用に、専門家の手が必要でした。
なぜなら、学習させるデータの形式を揃えたり、精度の高いモデル構築を行ったりするには、専門知識が欠かせなかったからです。
また、それらができたとしても、AIが出力するデータについて「解釈が困難」などの課題がありました。しかし、近年では手軽に活用できるAIサービスが増えています。
そのひとつがMatrixFlowのAutoMLソリューションです。
ビジネスのためのAI活用プラットフォーム「MatrixFlow」(マトリックスフロー)は、ドラッグ&ドロップをするだけで誰でも簡単に機械学習を使いこなすことができる画期的なサービスです。MatrixFlowは従来より短時間で高い精度のモデルを構築可能です。
それに加え、鉄鋼業界を例にして紹介したとおり「どの配合が疲労強度に実際に影響を与えているか」などの観点から、洞察を深めることができます。
さらに、MatrixFlowのアプリを使うことで最適化された材料の配合の候補を見つけることができます。AIが推奨した条件を元に試作をすることで、技術者は全ての実験を行う必要がなくなります。
そのため、最も効率よく結果が得られる領域に集中できるようになります。
AIを活用することで、新製品を開発する時間を短縮するだけでなく、高い品質の商品を創り出すことができるようになります。
また、事例として先に紹介したとおり、AIに一部業務を任せることで、人にしかできない「創造」の業務に注力することが可能です。実際に、MatrixFlowを活用した結果、大手材料メーカー様においては、最適化された配合を見つけたことによって「工数削減」と「品質向上」を同時に実現しています。
ほかにも、ゴムや半導体などの組成物の製造にも適用することが可能です。
AIを活用することは、研究開発期間およびコストの削減に貢献します。 -
プログラミング不要で材料の配合の最適化ができるAI予測モデル「MatrixFlow」
MatrixFlowは、処理単位のブロックをドラッグ&ドロップし、繋ぐことで実現できるという手軽さが特長です。
またデータの管理や作成したアルゴリズムの管理など、また、AI構築に関わるすべての工程を一元的に管理することが可能です。
業種・業界によらず活用ができます。
また、開発を続けることで開発ノウハウがプラットフォーム上に蓄積されていきます。そのため、活用を続けるほど、材料配合の最適化など、求める結果の精度は高まっていくと言えるでしょう。
製造業においては、新商品開発の早期化に加え、開発費用の削減が期待できるといえます。ぜひ、詳細はお問い合わせください。
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